金と緑/木立 悟
 




ふかみどり
ふかみどり
言葉を手わたし
笑むみどり


腕の輪まるく
伝うしずく
胸をすぎる
こがねの尾


風のなかをふり向けば
たくさんの声が消えてゆく
さらにさらに小さな声が
まぶたに触れては昇りゆく


震えは朽ちた柵をめぐり
手を振るように去ってゆく
道は流れるものへと変わり
野をわたる透明を映し出す


たちたちと空は近づいて
地の涙を見つめている
さまよう緑に降る飛沫から
こがねがこがねに生まれる日


灰にかがやく野の波に
金と緑は手をひたす
あたたかく淋しい息のなか
午後の光の手をむすぶ


ひと言ひと言の木の上に
金と緑の実は揺れて
風と風のはざまに満ちて
空の鈴を響かせてゆく






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