片糸でんわ/たりぽん(大理 奔)
 
砂時計が流すことのない一粒の砂
悲しみを知るか

桜を手折る時、残された枝の揺らぎ
寂しさを知るか

発電と称して進むことのないプロペラの空回り
孤独を知るか

鍛えられていく鉄塊の叫ぶ雷のような火花
激情を知るか


ああ、またそうやって自分の感情を
万華鏡にほうりこんでは
あまりの美しさに畏怖し
虚ろさに恐怖する君よ

電信柱に引っかかる月明かりの下で
うつむき吐き出す
生きるための異物




今宵
片方だけの糸でんわ
風に糸を遠くとおくに流して
耳を添えてみる

聞こえてくるだろう、鼓動と息づかい
ごうっという風の音に君の命


帰る場所を知る

還る場所を知る


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