とおり雨の月/木立 悟
水たまりの底には
うすく泥を着た羽とガラスが
凍った影のように並んでいた
鴉と鴎の鍵盤が
雀と鳩の木琴に
雨の降るなか
嫉妬していた
たくさんの
言葉のサーカスが現われて
空地をひろげては折りたたみ
ひろげてはひろげては
折りたたんでいた
光は夜にひろがりたたずみ
次の朝までここにいる目と
次の朝には消える目をして
海に沈む道を見ていた
急に五月が現われて
緑を描けと言ったので
画家はわざと雨を描いた
何も見えない雨を描いた
だからこれは六月のもの
ひねくれた光の月のもの
雨と晴の間に沈む
黒い黒い羽のもの
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