首筋の紅/黒田康之
 
よかな長い脚は
それとは別の惜別を抱きしめながら
また私の前を歩いてゆく
夕空に伸びて行きそうな広い背中を躍らせながら
すべてを深く知り合った女は
すべてを深く知り合った私の前を通り過ぎる

卒然
私の眼前には
百人も
千人もの女が
すでに消えかけた
首筋の紅をさらしながら
呆然とうらむ目つきで立ち尽くしているのだ
私の中に収まろうとしない熱情の
葬送としての現実である
戻る   Point(2)