本/葉leaf
 
な感覚とオスミウムの精神とがしぶきをあげて交接する二色の空間に、経験体は存在をはじめた。僕はそれをからだの一部のように感じるが、その感覚もまた、経験体の油でぬれた面皮に食されてゆくのだ。

僕の手はふたたび切り離され、いのちの馥りを輪生させながら本を閉じてゆく。夢見られたものと夢見られていないものとのはざまで、僕は遠のく感傷をきいている。僕の髪の毛は次第に僕のからだを覆っていくが、心音だけは包むことができないでいる。

心音となった僕は藍色の顆粒だ。経験体はかろやかに跳躍して、僕の足を食しはじめる。

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