組詩「二宮」/岡部淳太郎
 

石で出来ているわけではないのだが
のぼってゆく
川匂神社の石段を静かに
のぼってゆく
石の心を持つのは神の御業であろうか
石段の先に萱葺き屋根の神門がある
人の心と同じく
燃えやすい物質
燃えやすい屋根の向こう
ここから先は神の領域
その入口が見えてくる
のぼってゆく
川匂神社の石段を静かに
脚の弱った男がのぼってゆく


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神奈川県中郡二宮町の、相模国二宮の、祝われた、呪われた、狭い土地の中で、脚の弱った男は、脚を引き摺りながら、転倒と直立、それらふたつを常に繰り返しながら、朝の驚きの中で歩いている。祝われた、呪われた(常にすべてはふたつに分割される)
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