深遠なる夜に/汐見ハル
 

とか
生まれたときの記憶と
ひとしく
わたしたちにはいつも
感覚することはできない
けれど
支配
されている
有限の無限に
混沌をはらむ真空に
血のかよった
孤独に

遠ざかり
果てを伸ばしながら
最果ての向こうを
めざして
いつか
ふれあう
べつの空洞を
さがしもとめている

草を渡る風
虫の音は
つめたく澄んだ水が
波紋をひろげるようにして
親愛なる静寂を
つたえる

まるくとじた虹が
月を
抱きしめて
ほとり、

涙をこぼしたなら
温かな羊水のようで
うれしい


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