画家/砂木
ついっと 顔をあげ
仰ぎみている
病室の 窓は薄暗く
パジャマ姿の そのひとは
ベットを 脱け出し 立ち あがって いた
「いまねえ そらを かこうと おもって」
少しとまどいながら 会釈する私に
いそがしそうに そのひとは 言った
ほらっ と スケッチブックを 開いてみせる
ああ ほんとに 笑いながら そっと受け取る
白い画面を 四つに分け
それぞれに書かれた
窓枠 電線 電柱 雲
少し小さい 少し大きい
同じような風景
なにか いいたかったのだが
ただ うなずいて ページを めくった
中学生の時の担任の先生
日本画家である事は 知
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