見えていてすでに海は/藤原 実
 
言った。
にらみあう二人に仲裁に入った<明海>が「船の上でもめごとは困ります。どうです、いっそ作者に聞いてみたら・・・。さっき甲板で<詩人>さんをお見かけしましたよ」と言うと、<批評家>(1)と(2)は憤然として「あんなやつに詩がわかってたまるか!!」といって、船室に降りていってしまった。


  炎昼に海辺のピアノ焼け落ちて音響くとき火宅も踊る


甲板に立って<詩人>はぼんやりと海を見つめながら考えていた。
いったい<あいつ>はなにが気に入らなかったのだろうか?あんなにピカピカに磨き上げて、オレのこころを映してやったのに・・・。まさか自殺なんてことはないだろうな。そんなことをさ
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