霧の様な死あるいはナルシシズムについて/立原道造を読む/渡邉建志
叢に露の雫が光つて見えた――真珠や
滑らかな小石や刃金の叢に ふたりは
やさしい樹木のやうに腕をからませ をののいてゐた
吹きすぎる風の ほほゑみに 撫でて行く
朝のしめつたその風の……さうして
一日が明けて行つた 暮れて行つた
おまへの瞳は僕の瞳をうつし そのなかに
もつと遠くの深い空や昼でも見える星のちらつきが
こころよく こよない調べを奏でくりかへしてゐた
三 窓下楽
昨夜は 夜更けて
歩いて 町をさまよつたが
ひとつの窓はとぢられて
あかりは僕からとほかつた
いいや! あかりは僕のそばにゐた
ひとつの窓はとぢられて
かすかな寝息が眠
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(13)