バス停にて/銀猫
赤錆の目立つ時刻表のバス停に立ち
来るか来ないかの
微妙な時刻にバスを待ってみた
進路の前にバスは無い
順路の後ろに気配も無い
行く先も馴染みの無い駅の
名前の書かれたその標識には
勿論閑散と予定の時刻が記してあるが
それもあってない口約束のようなもの
雨が降ればきっと傘をたたむ分だけ遅れ
晴れていれば
だらだらした乗客の
歩調の分だけまた遅れる
果たしてこの行き先不安なバスを待って良いのやら
誰のせいにも出来ないよ、と
妙に冷静な耳打ちが聞こえる
今にも堪えきれずに零れそうな雨と
少しばっかりの理由なき焦りと
そういう憂鬱で形成された時間を
自虐のように弄んでは
悲劇の主人公を気取りながら
実は楽しんでいるのだ
もう一度
振り返る
もう一度
期待してみる
ああ、バス
来た。
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