それはかなしみのため/石川和広
 
でも素直に
なれなかった二人
僕の中に生きている

もうおばあちゃんは
ご先祖様のところに
いくかもしれない

愛のすれちがい
噛み合わせが悪い
僕のなかの歯形
かなしみ
誰のものでもない
僕の闇に咲く悲しみ

ねえ
お母さんは
どこにいるの?

お母さんも
おばあちゃんも
迷子なら
僕も迷子?

しかし
離れた個体
ぼくというものに
また意外なところから
闇が降りてくる

かなしみ
なれても
かなしみ

僕はお母さんをたすけられないかもしれない

僕は闇の中で戦う
かなしみと
折り合い
歩き出す戦い

それは
かなしみのため

それは
かなしみのため
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