亡骸/
椎名乃逢
夏は逝くのだと思う
春や秋冬は毎回 同じものが回っているのに
夏だけは毎年燃え尽きてしまうのだと思う
少年の肌や少女の心に深く爪痕を残して
印象づけておきながら
潮のように引いてゆき
やがてひっそりと紅葉の根元で消えてゆくのだ
野分にとどめを刺されて
力強くそして儚い生き様に惹かれ
蝉は運命を共にするのだろう
そして私の中にも同様に
ひと夏を駆け抜けた
熱情の亡骸がある
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