夜のなか/プテラノドン
思いもかけず月がふくれあがる
―コオロギが膨らましている。
また一匹、また一匹と
たくさんの虫たちの鳴き声が、
あるいはそこに
誰かの小さなささやき声も混じって、
月にあいている無数の穴に吸い込まれていく。
それを、地面の上に立って
望遠鏡の形にした手のなかから
覗いているあいだは、
たしかに月を保有している。
短絡的ではあるものの、
十五まで数えるがそれ以上は数えずに―
蒲団に眠りつこうとしていると、
さっきまで聞こえていた虫たちの鳴き声が
ふいに止んだりする。
再び聞こえるまであいだに
シーツの上で、ちょん切れた眠気を
つなぎ合わせようとする。
そうして繰り返し耳をすましながら
初秋の行末を気にしている。
それは見守るようで、
見守られているようでもあるので
ときおり、カーテンをずらしてたしかめたくなる
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