朝食と指輪/はな 
 

ずいぶん 暗い夜でした
あなたのいない教室に
きょうもきちんと朝がきていました

まるい
わだちになって続いていく
あたしの指をいまも つかんだまま


(きょうは、スクランブルエッグをつくりました)
(ブロッコリーと、トマトをそえて)
牛乳の色をたしかめながら
あなたの顔を
机の上にそっとえがいてしまったんだ、

ごめん



わすれたもの
なんども書いてはちぎった
てがみが
ポストにうっかりしゃがみこんだように
残されていて
泣きました
ゆっくりと声をだしながら
それでも


あなたの詰襟は菫の匂いで
あなたの髪は強い雨にしめっていて
あなたの声はゆるやかで
あなたの耳はやっぱり
すこしだけ、上のほうについていました



引き出されたあたしの手は
あの日のじめんをとかすような
通り雨に 
ぬれていた





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