見つめあう二人/LEO
 
今しがた
煎れたばかりの紅茶は
口をつけないまま
冷たくなって
湯気をたてることも
香りが揺れることも
なくなっていたので
カップの上から覗いてみた

ふたつの瞳が私を見ている

ティーポットに
熱いお湯を注いだのは
ほんの数分前
ゆらゆらと
甘いフレーバーが
漂っていた

それともそれは
随分前のことだったのかしら


とりあえず
鳶色の瞳が
私を見るものだから
口をつけることも
煎れなおすことも
しないまま
カップの上と中から
互いに
見つめあったままでいる

だんだんにそれは
「あの人の瞳に似ている」
気がして
目線を外せなくなってしまった

きっとこんな時は
頬が緩んでいるのでしょう
少し幸せな気分で



どれくらいの時間
こうしていたのかしら

暗くなりかけた部屋
鳶色の瞳に
うっすらと陰がさし
「あの人の瞳に似ていない」
と気づいて
少し怖くなった

慌てて
暗い部屋に
灯かりをともす


テーブルの上には
冷たくなった紅茶のカップ

見知らぬ瞳を残したまま
 

戻る   Point(9)