優れた戦意高揚文学「アンの娘リラ」モンゴメリー/白糸雅樹
 
 「赤毛のアン」シリーズは、アンの大学時代、婚約時代、新婚時代、など時代を追ってシリーズになっている。その最終巻(10冊め)「アンの娘リラ」はアンの末娘リラが、恋に憧れる十五才誕生日間近「崇拝者を持ちたがっていたのである! しかも一人ではなく複数にである!」から、「あたしはどうして恋愛事件を愉しい面白いものだなどと想像したのか自分でも分らない。恋愛事件はじつにおそろしいものだ」と二人の崇拝者でさえ持て余すほど一人への愛を強く感じ、その恋人の帰還を迎える十九歳までの、成長物語である。時と場所は第一次世界大戦のカナダ。
 この小説は一見、戦意高揚文学ではない。戦場に夫や恋人、兄弟を送り出す女の気持や
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