貝/琉
いつからか 告白することも出来なくなった
僕は
かたい貝になったのだ
息をする時だけ 口を少し開ける
その一瞬だけ
世界に触れ 地球の一部を感じる
僕は 貝
君に触れるどころか
声をかけることもできない
だから
言いたくないことは 問いだたされない
秘密にしておきたい過去も
恥ずかしい癖も
知られることはない
だけど
それよりも もっと大事なことを
僕は 引き換えにしてしまった
君を見ていることも
君を気にかけていることも
まして
君を好きなことも
言えなくなってしまった
僕が言いたくなかったことは
どれほどの大きさだったのだろう
今となっては
魚の大きさより 小さいものとなって
海の泡と 流されていくだけなのに
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