アキアカネ/落合朱美
つか命を継ぐために用意されている
もしも運命が少しだけ横を向いてくれたなら
私の中で育ったかもしれない命
でもそれは貴女ではなかったかもしれない
もしかしたら生まれてこなかったかもしれない貴女
けれど今は間違いなく彼女が貴女を抱いている
それが現実
幸せな棲家からの帰り道
歩道橋の真ん中で突然歩けなくなる
満たされたことのない子宮が
継ぐことのできなかったあの人の命を
思い出しては疼いている
空っぽの子宮が
彼女と茜の姿を思い出して蠢いている
なにかとてつもない感情が
嘔吐するみたいにこみあげて
うずくまる私は
倒れることも再び歩き出すことも
できないまま
夕暮れの空にアキアカネが舞っている
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