箱庭の吟遊/
あとら
こんにちは と
差し出された名刺には
箱庭とだけ書いてあった
鞄の中から取り出した
石に草木に川に橋、
さらには水車小屋までも
あれやこれや説明しながら
砂を敷き詰めた顔面に
どんどんどんどん貼り付けていく
どうしたわけか口だけは
何も置かれず砂のまま
巣くう地獄の存在に
気付くことなく
観賞を続けている
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