スクランブル交差点の真中で/ベンジャミン
 
膨らんでゆく不安を感じていた
知らない人とすれ違うたびに
増してゆく孤独があった

遠のいてゆく誰かの背中に
思いつく限りの名前を呼んで
立ち止まらせたいと思ったのは

それが優しさだと言いたかったからだ
だけど本当は


スクランブル交差点の真中で


うずくまることは簡単だったけれど
要らないもののように置き去りにされることが
淋しくてしかたなかった

誰もが目的を持って歩いているように見える
けれどその多くが進むしかないという決意に
突き動かされているだけなのだと知っていて

そしてそれは正しいと応援してあげたかった
だから僕は


スクランブル交差点の真中で


もみくちゃにされながら前も後ろもなく
見上げた空に逃げ場などないということを
証明してやろうと思った


スクランブル交差点の真中で


もうじき車のクラクションが鳴り響く
いつかそんな夢にうなされたことを思い出して


僕は少しだけ笑った

    
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