落陽の標本箱/青色銀河団
 
静かな風が吹き始めます。感情は涙の滴り。イバラの花びらはぼくらを遠くに抱きます。ようやくちいさな春がきましたが、ようやくきたちいさな春は、白い舗道の悲しい小学校に続いていました。香りの道にそって、夏の紙飛行機を飛ばしました。落陽は標本箱の中に大事にしまいました。

終わりのために始まりはあるのです、と先生は言った。ずるい先生。新しい鑵のようにいつだってぼくらの生活は淋しいのだから。もう夜明けは透明な凍土になりましたよ。別れのために歌ううたなのですから、鳥篭は空っぽなのですから、渦巻きの空へはもう戻れません。

隠し持ったナイフは瞬く夕陽のような匂いがします。星は方位を告げ、空は深い信仰に導
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