夜空の幻灯機/たりぽん(大理 奔)
 
微かな水滴が
雨の存在を地上に示す

磁力線に沿わず自由な思想で
舞い落ちる雨粒は
落下する意思そのもの

季節の移りを告げてまわる風が
鈍色の雲を次の季節に追いやり

残り火がわずかな時間
雷を深紅に焦がして今日が死ぬ

夜が明日にむかって
星時計をまわし
夏を惜しむ名残の雲が
もう少しもう少しと
それを真っ黒く覆い隠すので

僕は、幼い頃に盗んで
隠してあった
星の幻灯機を
高原の聖火台に運び上げ
未練がましい雨雲たちの天井に
かりそめの星座を投影して
季節の水時計を
運行する

自転と別の軸の自由な思想で
回転する銀河群は
時を移す意思そのもの

季節の移りを告げてまわる
星座がたくさんの想いを映し
雲のスクリーンの切れ目
遠い暗黒から

流星が微かに頬の水滴を照らす







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