終わりのない唄/umineko
まだ君が帰ってなかったので(だって平日の午後4時だ)、港の方まで足を伸ばす。海鳥は自由かと問われれば、たぶん違うと答えるだろう。僕にはまだ空があるけれど、彼等には何もない。選択肢が与えられなくて、何の自由か。
漁船と漁船が重なりあって、ぎいぎいと低く鳴っている。打ち上げられたヒトデはもう、星形に息絶えている。海の香りは、いい。存在をさり気なく伝えてる。だから好き。
さんざん時間をつぶしたあとで、君にメールを打つ。…今日暇なの?…ウン、割と早く終わったんだ。返事は少しゆっくり。君の部屋の前に立つ。チャイム。人の気配。ばたばたと近づいて。
「やほ」 …え?
どうして?そりゃそうだろう。「迷惑だった?」ううん、でも…
「実はさ、どうもこの国は駄目らしいんだよね、だから逢いに来ようかなって思って。」
そっか…。
君がまっすぐに僕を見る。そしてゆっくりと君に戻る。うん。わかった。僕は後ろ手にドアを閉める。君はキッチンへと歩き出す。
君の肩に手のひらをのせる言い訳を。僕はずっと考えている。
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