名前の無い風/恋月 ぴの
透明な箱の行き先ボタンを押したところで
君の行き着く先は選択出来ない
目をかっと見開いていても
ロバのように耳をそば立てていても
透明な箱の行き着く先は
既に決まっている
透明な箱はちゃんと知っている
人生の在り方なんて
すこぶるいい加減でさ
自分では何も決断出来なくて
面倒な事は誰かに押し付け
被害者意識に凝り固まりたいだけなのを
透明な箱の中に押し込められ
右往左往する君は
光りの差し込む先を出口と勘違い
殺到するその先で待ち受ける
絞首台への13階段
至福に満ちた楽園にでも行けるかのように
喜び勇んで階段を駆け上る
12段目で後悔しても既に手遅れ
気が付いても既に手遅れ
ぶらぶら揺れる
名前の無い風に煽られ
ぶらぶらぶらぶら揺れている
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