夏からの手紙/ベンジャミン
 
九月
雨が多いのは毎年のことで
それはさしてめずらしいことでもない
のかもしれない

秋というにはまだ早く
ちょうど残暑という言葉があてはまる
そんな晴れの日も多い
九月


家の郵便受けは壊れていて
小さな家のかたちをしているのだけど
その扉にあたる部分の金具がとれてしまっている
だから
雨の日には雨が吹き込んでしまって
中の郵便物をぬらしてしまうのはしょっちゅうだ


九月
何処からともなく
一通の手紙が届いていたことに
気づいてはいたけれど

何となく放っておいた
それは吹き込んだ雨に何度もぬれていて
同じように何度も渇いて
九月


それはもうしわくちゃになってしまったけれど
書いてある文字など
とうに読めなくなってしまったのだけれど

それが夏からの手紙だということは
たぶん匂いで知っている
九月

    
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