どこにでもある話 3/いとう
 
んで歩いていたのでとりあえず
「彼の噂を知ってるの」と忠告したが
「知ってるけど聞きたくない」と彼を見て手を振る
今思えば最初から兆候はあったのだ

彼と長く続く女性は皆無に等しい
自分の誕生日に他の女と寝る男を
愛し続けられる人は珍しく
それは彼に言わせれば
あきらめているのか
がまん強いのか
独占欲がないのか
自分も遊んでいるのか
そのうちのどれかに当てはまり
当然彼女は
そのうちのどれにも当てはまらない
どこにでもある話だがうまくいくわけがなく
彼と彼女は2週間前に別れている

「幸せにしてくれると信じていたのに」と
後で彼女がつぶやいたのは
彼の知
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