少しだけ歩き疲れたら/千波 一也
 
ベンチに腰を下ろしたら
まるで恋人みたいな気分になって
不思議



人の通りの薄い時刻
けれども人がいない訳ではなくて


噴水を挟んだ向こうのベンチには
しっかりと
恋人たちが
腰を下ろして
いるのだし

ついでに言うなら
お隣にも
しっかりと、ね




ぼくたちはキスをするし

どこに
どんなホクロが
あるのか
さえも
知っているのだけど

なんだろうね

恋人っていう想いをあらためて手にすると
くすぐったい心地が
するね



言葉にはいのちが宿るという話

あれは
そんなに疑わしいものではないかも

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