*夏だった*/かおる
出涸らしのような夏が
のっぺりと緑に張り付いている
季節も針を進めるのを忘れたようで
時がとわに 流れていく
生まれ落ちた時代の旅人
その想いは 積っていく
しんしんと
真綿のように くるんとくるまれて
疲弊していく 日常にすり潰されて
渺々と吹き荒れる砂塵のような想い
時の波に攫われていく
秋にうまれた旅人も
冬にうまれた旅人も
春にうまれた旅人も
夏にうまれた旅人も
気がつけば夏だった
どの夏の記憶もよく似ているのです
幸せな夢を見続けて・・・
宵闇を切り裂き 弾け散る 花火のようで
夢から覚めるとジュ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)