林檎/
椎名乃逢
赤いカケラが私の喉に
意地悪くつっかえて
声の出口を奪うのです
飲み落とそうと溢れる唾液は
それも叶わず流れ落ちる
カケラから甘酸っぱさを吸い取りながら
透き通った黄金(きん)色の蜜
私の体内にそれは広がって
指先から髪の毛の先
背伸びする爪先までも
蜜の痺れに潤うのです
赤いカケラが私の喉に
痛くやさしく留まって
私の吐息に蜜を添える
土踏まずも震え出した
あなたの熱っぽい吟味に
遂にカケラは落ちてゆく
私の手の届かない
深い深い 闇の底へ
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