毒薬/mina
 
木々の葉は
さわさわと風に揺れ
わたしを誘っている。
緑がわたしの眼を射抜く。
胸がきゅうと縮んで苦しくなる。
森羅万象、全知全能の神までも動きを止め、
全てが凍りつき、
わたしはこの身体を天空に投げ出す。
初夏の気配の中で
心が白い息を吐いている。

5月になると
わたしの心に浮かんでは消える
断ちがたい誘惑。

わたし以外の誰か
存在と不存在とが交互にフラッシュバックする
全ては悪夢
妄想が毒薬のようにわたしの心をどす黒く犯す。

耐え切れない孤独。
貴方がわたしの前からいなくなった日。
あの日から、全ての存在は意味を失い、
もはや空や海が蒼く輝くことはなくなった。

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