名前のない色/巧
僕は名前が欲しかった
「僕は名前が欲しいんだ」
「うーん、君は『白』にはなれないね」
目の前にまぶしい色があらわれた
「だって『白』はこれだから」
「他に名前はありませんか?」
「君は『黒』にはなれないね」
目の前に夜があらわれた
「だって『黒』はこれだもの」
「うーん、他に名前はありませんか?」
「そうだ、君には『灰色』がいいかもしれない」
「『灰色』ですか?」
「そう、黒と白のまん中さ」
そうして僕は『灰色』という名前をもらった
「僕は『灰色』だ」
何度も何度もそう言ってみた
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