廃園にて。/有邑空玖
 


蒼空と云う檻に閉じこめられて居る
手に触れるのは薔薇の棘や蔓草の葉
足下の土はひやりと冷たく
……いつから此処にこうして居るのだろう?



一切の物音がしない透明な檻の中で
僕たちには過去もなく未来もない
神様はきっと
この庭を忘れてしまったのだ
苔生した噴水の天使も
錆びたアーチも



棘は指に刺さるものだよ
出来た疵は二度と治らない



僕たちを封じてこの庭は呼吸をする
風も空も陽の光も庭の見せる夢
足下の影がふわりと揺らいで
……いつまで此処にこうして居るのだろう?



神様はきっと
この庭を忘れてしまったのだ




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