*一歩 二歩 散歩*/かおる
夕立の後にひょっこり現れたお日様が
でこぼこの稜線のきわで立ち去り難く
早くおうちにかえらなくちゃ
暗闇が世界を飲み込む前に
いいえ、大丈夫と
夜の女王がマントを翻す
ゆっくりおうちにお帰り
秋の虫のオーケストラが哀愁のメロディをかなで
ほら、寂しくなんかないでしょう
リリリっ りりりっと共振する響きに背中を押され
喜びの詩にひっそり蒼い泪が
絶望の縁にちっちゃな花が一輪
想いのカプセルが靄のように
びっしりと空気中に漂っている
命の記憶で満々な雨上がりの夜道
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