蕾ひらく/銀猫
 

わたし、という曲線を
無謀な指が
掌が
少しの優しさも無くなぞる


書院窓の向うでは
秋の長夜の鈴虫が
交尾の羽音で月の影絵を滲ませて


こっちにきて
こっちにきて、と啼いている



あなたは
地熱のような呪縛で
尼法師の衣を剥ぎ取って


東の空に
暁さすまで

ここにきて
ここにいて


白い白い朝の中で


わたしが
ぽん、と
開くまで


釈迦の足元でしどけなく
わたしが眠ってしまわぬように





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