雑感&書評『テクスチュアル・ハラスメント』/佐々宝砂
ィレット』などの作品タイトルを知った。あくまでタイトルだけ。エミリ・ブロンテが詩を書いていたことも知った。だがエミリの詩を私は2編しか読んでいない(*1)。それ以上はなかった。どこを探してもなかった。アメリカでも似たような状況なのだということを、私はこの『テクスチュアル・ハラスメント』を読んで知った。たくさんの女性作家と女性詩人がいたはずなのに、彼女たちの作品はどこに消えたのだろう。それこそが、15歳の乙女のさざ波たつ湖水のごとき心には、明治の軍医の洋行記(*2)などより遙かに必要であったものを(*3)。
私はいくども書棚やカタログを探しては落胆した。たとえば野溝七生子。あるいは尾崎翠。
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