台風一過/haniwa
 
台風が去ったあとの夜明けみたいな
気分になった君は、信じることにした
今の自分は遥か遠くの山々に繁る
木々の間で囀る小鳥の目の中に
映る小さな朝露の落下によって齎される
地下水の龍脈がやがて大きな滝になり
家出したばかりの小さな少年が
途方にくれて辿り着いた追憶の場所
その水を汲みに来た老夫婦が
かつて思い描いた理想の未来
そういうものがあるということを
馬鹿みたいに信じることができるのだと
そんなことが本当にあるのかどうかはわからないが
ただただ、信じることにした
君のこれまでの息苦しさ
絶望とか虚無とか暗闇とか
それは過ぎ去った台風によるものだと
いま台風は過ぎ去ったのだと

今日君に一台のオートバイが届く
君はそれに乗って
どこまでも行けるのだと
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