海辺/mina
僕は海辺に出た
風が鳴っていた
寒い日だった
あの日
君は長い髪をなびかせながら
僕にこう言ったんだ
離れないわ
あれからどれだけ経ったろう
君の笑顔はもうなくて
風に君の泣き声が混じっている
いや、それは僕の嗚咽だったかもしれない
黒い海は
君をどこかに連れて行ってしまった
白く泡立った波は
僕の心をさらに淋しくさせる
僕は海がそれから嫌いになった
一瞬、あの日の青い海が見えたような気がした
君の笑顔が見えたような気がした
灰色の空から波の雫がはらはらとふりそそぐ
濡れて重くなった靴が砂を噛む
もはやこの海辺に夏が来ることはないのだ
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