楽園/カンチェルスキス
 




 人間の体のつくりを真似て話しながら
 どこにもいない人間になれたらいいのに
 ぼくらは作られたもの
 あと一秒で生まれ変われると日常的に信じて
 浮遊するゼリー
 いつでも電子レンジの中の空気で爆発寸前して
 ダラダラした坂道を転がって
 異臭まみれのドブに落っこちるか
 ドブを越えた向こうの有刺鉄線に突き刺さって
 豊胸手術の女のシリコンみたいに中身が飛び出す
 しまりのないゼリー
 いいんだもの 
 用をなくした浮き輪のひしゃげた姿が
 ぼくらの屈託のない笑顔だ
 川を飛び越えようとすると
 いつでも夜になって
 着地した彼岸にぼくらは戸惑う





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