楽園/カンチェルスキス
人間の体のつくりを真似て話しながら
どこにもいない人間になれたらいいのに
ぼくらは作られたもの
あと一秒で生まれ変われると日常的に信じて
浮遊するゼリー
いつでも電子レンジの中の空気で爆発寸前して
ダラダラした坂道を転がって
異臭まみれのドブに落っこちるか
ドブを越えた向こうの有刺鉄線に突き刺さって
豊胸手術の女のシリコンみたいに中身が飛び出す
しまりのないゼリー
いいんだもの
用をなくした浮き輪のひしゃげた姿が
ぼくらの屈託のない笑顔だ
川を飛び越えようとすると
いつでも夜になって
着地した彼岸にぼくらは戸惑う
戻る 編 削 Point(11)