トイレの男たち/チアーヌ
「いや、ほんとにどうもすみません。お怪我はありませんか」
「いえ、こっちこそ、トイレを汚してしまって・・・」
「そんなとんでもない。不慮の事故ですから、それは。それよりも、大丈夫ですか」
「いや、大丈夫ですよ。別に、ケガもないし。それより、さっきの駅員さん、大丈夫なんですか」
「それはもう・・・。いや、本当に申し訳ありません」
「俺はいいっすよ。服も貸してもらえたし。家に帰って着替えて会社に行きますから」
俺は煙草を取り出して火をつけた。
ちょうど目の前にデカイ灰皿があったのだ。
一服して一休みすると、俺は小田急線に乗って家に帰った。
次の日の朝、俺はまた小田急に乗った。代々木上原に着くとダッシュして向かいに待っている千代田線に乗るのが俺の日課だ。千代田線に乗り込み、一息つくと、駅のホームに昨日殴り合いになった駅員が立っているのが見えた。そいつは申し訳なさそうに目礼をしてきた。
俺も軽く挨拶して、つい笑ってしまった。
飲みすぎには気をつけないといけねえな。
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