どこにでもある話 2/いとう
 

どこにも持って行き場のない感情を無理矢理どこかに持っていこうとして
ついに彼にコクった
彼は数分無言で考えた後
「ありがとう」と一言だけ言ってファミレスの席を立ち
そしてそのまま
彼女に言わせれば「記念の一夜を過ごし」
俺から言わせれば「食い散らかされた女が一人増え」
どこにでもある話なのだが
その夜以降彼からの連絡はない

驚いたことに
彼女は悲しむことも恨むこともなく
「彼が私にしてくれた最高のこと」と笑う
その言葉は
あまり何も考えない性格から発せられたものではなく
100%見返りを求めない
その純粋な感情が発せさせたものに思えて
そこで彼女の話は終わ
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