そら/あさみ
 
 ぐっ と
 拳を握り締めて
 唇を引き結んで

 空を 見上げてみた。

 どんなに目を凝らしても
 どんなに手を伸ばしても

 この 赤銅の そらには

 星も なくて
 月も なくて
 届かなくて 涙が溢れてきた
 

 赤銅に燻るそら には
 白い雲 の代わりに
 幾つもの工場から立ち上る 灰色の筋
 虹 の代わりに
 毎夜、眩く色とりどりの光を放ち続ける、ネオン街
 優しかった太陽は いつからか怒り狂い
 今にも我々を飲み込まんと、その顔を膨らしている
 空を飛び回る鳥たちは その姿を消し
 今では僕らが 鳥篭のように張り巡らされた電線によって 捕われている
 


 僕は 恐ろしかった
 僕は 、その太陽に飲み込まれてしまうことが恐ろしくて
 僕は 、太陽の怒りに 空の悲しみに 捕われた僕たちに
 いまだ 気づいていない大人たちが 恐ろしかった。
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