陽雨歌/木立 悟
 




触れればずっと鳴りつづく
触れない気持ちがそぞろに歩く
触れるものなどないはずなのに
気づかぬうちに触れはじめている


隣り合うふたつの窓のひとつに
遠い窓の灯りがとどき
まばゆい灰の空を映した
もう片方をまたたかせている


金属 土 波
鳴りつづく闇
見知らぬいのちを生かす風が吹く
そのためのすべてを負う風が吹く


どこからか近づいてくる音が
どこかでじっとしている容れ物に鳴り
午後を歩むまなざしに
まばらなゆらぎを見せてゆく


青と青から降る灰が
道のしびれを伝わって
橋から川へあふれては
空の指先を流れに残す


閉じる目ひらく目のはざま
鈍の小雨のくりかえしたち
見つめるともなく見つめる先の
見知らぬいのちに触れてゆく







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