装飾の鹿/本木はじめ
とりあえず、ではじまる朝の洗面所嘔吐している昨日の夢を
長いながい蝶のねむりをほどくとき薔薇の二文字のほころぶを言ふ
とうもろこし畑に無数の歯は落ちて兄弟喧嘩に暮れゆく夕陽
彼岸花の名前も未だ知らぬ子ら夜な夜な真っ赤な口紅を請ふ
雑草を踏み間違えて墜ちてゆく暗き幼年時代の恋絵
家系図をたどるゆびさき見覚えのありし名前の少女も老婆
あかきいろみどりむらさきしろくろのきみをまてづにとびこむ彼岸
一辺にひるがほ咲きて別れんが為に出会いし恋人か問ふ
モーニング ほろびるビルに射すひかりも滅びるゆめもあいも軌跡も
思い出は立ち入り禁止の柵の外に果てまでつづく錆びた青空
月光、その他もろもろの美麗句で語れ、草食の詩歌を育つる者ら
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