バス と そのこ/朝野
もうずっと
待っているのに
帰りのバスが
こない
空は
まだ
ぽっかりと
明るいけれど
そのこは
つま先から
すっかりと
暮れ
まっくろだ
バスは
こない
空は
いらいらと
錆びゆく夕焼け
そのこは
ほのぐらく
時雨れている
バスは
こない
停留所の
つめたい灯りに
よりそうと
そのこのからだも
ほのかに
ひかる
バスは
こない
空は
まぶたが
重たくて
いまにも
閉じようと
している
バスは
ようやく
あらわれ
そのこの姿を
みとめ
ウィンカーを
点滅させ
ちかづいてきた
ゆっくりと
それだけで
そのこは
涙が出そうだった
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