僕の世界は海になって/石川和広
 

かといって入院した人にも
仲間に入れなくて
(一回入院をすすめられた)
ポケットには緑色の障害者手帳が
入っていて

そのことを詩にしようと
思って書いていたのだけれど
操作ミスで一回消えてしまって
思い出しながら
つづけていて
思い出しながら
変わっていくから
思い出すって怖くて

僕の視線は
世界が成り立つ
その手前から
光景が成り立つ
直前を
さまざまな声の生成を
見ているのか
さまざまな声や
アイスコーヒーが
アイスコーヒー
であることを
確かめる前に
飲んではいるが
飲んではいる僕の
手は
手であることを体は忘れていなくて
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