僕の世界は海になって/石川和広
ミッドナイトプレスを
買った帰り道
天王寺駅構内を歩いていると
笑っている人も
うずくまる人も
奇声をはっしている人も
中学生も
しゃべっているおばちゃんも
みんな真剣だなあと思った
ぼくがふざけているのだろうか
ひとりひとりの頭の中に
語りかけたい声や
買い物どうしよう
とりとめのない声があって
うずまいていて
誰かと歩いていて
ひとりで歩いていて
その中に奇声をはっしている人もいて
僕は昔の仕事が知的障害者施設だったから
なれているのかな
いやちがう
通りすぎていく人の中で
奇声は何かを
懸命によんでいるようだった
それが聞こ
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