僕の世界は海になって/石川和広
 
ミッドナイトプレスを
買った帰り道

天王寺駅構内を歩いていると
笑っている人も
うずくまる人も
奇声をはっしている人も
中学生も
しゃべっているおばちゃんも
みんな真剣だなあと思った

ぼくがふざけているのだろうか

ひとりひとりの頭の中に
語りかけたい声や
買い物どうしよう
とりとめのない声があって
うずまいていて
誰かと歩いていて
ひとりで歩いていて

その中に奇声をはっしている人もいて
僕は昔の仕事が知的障害者施設だったから
なれているのかな
いやちがう

通りすぎていく人の中で
奇声は何かを
懸命によんでいるようだった
それが聞こ
[次のページ]
戻る   Point(10)