傘の影/あやさめ
 
回り尽くしたカセットテープの切れ端に
写るのは財布の残骸だけ
マグカップの上下逆さまな色を笑うと
雨が落ちてくる

彼らがまた化石の中に化石を見ている
九十九折のような峠道の崖下の出来事
遺跡から掘り起こした鏡の中に死人が映っている
その上から雪の色をした人々が降ってくる

U字型と工字型のブロックを積み重ねた
その空間の向こう側から彼らが呼んでいる
こっちを振り向いても道路とその先には欠伸しかない
だからもう一度ループして遊ぶしか方法がない


鉛筆から始めてボールペン越えて消しゴムまで
流れない薬品の上でぷかり浮いていたり
時折ひっくり返してみるといつも同じ形のわりに
喋り方がそのつど変わる気まぐれさが見えている

穴の開かない列車なのに今日も雨が降る
屋根も壁も全て無いと言ってしまえば死んでいる
傘の無い準備もしていない次の店もない道の
映り具合がレンズにかかる水で台無しになる


それでも誰かは雨の中にいるふりを続ける
画面に溶けてしまうまで
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