水鏡/ばら
 

あの子のこぼした涙が
あなたの水面をゆらしたの
波紋はゆっくりと広がって
いつしか 消えてしまうと思っていた

水鏡にうつったわたしが
ゆがんでみえるのは なぜ。

どんなに掻き乱しても 波紋が消えないの
どんなに掻き乱しても あの子が消えないの

舞い上がる水飛沫
ゆれる水面
いくつもの波紋が交わって消えていった

なのに。

わたしがこぼした涙は
あなたの水面をゆらすことなく
いつのまにか 消えてしまっていたの

もう水鏡に 
わたしはうつっていなかった。



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